診療のご案内

ピロリ菌について

胃の中にいる細菌で胃の粘膜に生息しています。感染経路ははっきりとわかっていませんが、おそらく乳幼児期に口から感染すると推測されています。ピロリ菌を持ったお母さんからうつるなどの家族内感染も疑われています。ピロリ菌感染者の一部に胃・十二指腸潰瘍が発症します。胃・十二指腸潰瘍患者さんのおよそ90%はピロリ菌感染者で、それにより潰瘍の再発を招いています。またピロリ菌感染が持続すると慢性胃炎から萎縮性胃炎となり、胃癌の発生母地になると考えられています。

保険診療でピロリ菌検査・治療ができる病名

現在保険診療でピロリ菌検査及びピロリ菌除菌治療ができるのは以下の5つの病気のみです。

1.慢性胃炎(胃カメラでの診断が必要)
2.胃潰瘍・十二指腸潰瘍(胃バリウム検査もしくは胃カメラでの診断が必要)
3.胃MALTリンパ腫
4.特発性血小板減少性紫斑病
5.早期胃癌に対する内視鏡的治療後

このため上記診断以外でのピロリ菌検査および治療は保険診療適応外となるため、自費診療となります。「ピロリ菌に感染しているか知りたいが、胃カメラ検査はしたくないなー。」という方は、自費7,000円(税別)で尿素呼気試験を行うことができます。
(結果判明は1週間後)
「胃の調子もいまひとつで、ピロリ菌感染が心配だなー」という方は、保険診療で胃カメラを行い、その後に保険診療でピロリ菌検査を受けることができます。

ピロリ菌の検査方法

ピロリ菌の検査方法には、胃カメラを用いる検査法(迅速ウレアーゼ試験、鏡検法、培養法)と胃カメラを用いない検査法(尿素呼気試験、抗ピロリ抗体測定、便中ピロリ抗原測定)の6つの検査方法があります。
このうち感度(ピロリ菌に感染している人が検査で陽性とでる精度)と特異度(ピロリ菌に感染していない人が検査で陰性とでる精度)が最も優れている検査方法は尿素呼気試験と言われています。ただし単独では100%の精度にならないため、複数の検査方法を組み合わせることで診断精度が高くなります。
当院では胃カメラ検査で、最初に迅速ウレアーゼ検査を行います。この検査は胃の粘膜の一部を採取し、特殊な検査液に採取した胃粘膜を入れピロリ菌の有無を色調の変化で判断します。1時間ほどで結果がわかりますが、検査感度がやや劣るため結果がはっきりしない場合もあります。この際は、尿素呼気試験(検査薬を内服し息を吐く検査)を追加で行います。検査結果は1週間後の判明となりますので、後日再受診の上でのご説明となります。

<ピロリ菌を除菌するメリット>
ピロリ菌が原因での胃・十二指腸潰瘍はピロリ菌を除菌することで、ほぼ潰瘍を治癒させることが出来ます。
また日本人の胃癌の99%はピロリ菌に感染している人(または過去に感染していた人)から発生します。ピロリ菌を除菌することで胃癌の発生リスクを3分の1程度に減らすことができます。

<ピロリ菌除菌治療>
ピロリ菌は細菌ですので、抗生剤を使用することにより高い確率でピロリ菌を殺すことができます。基本は1週間お薬を内服するだけです。ピロリ菌が消えたがどうか(ピロリ菌除菌成功の可否)は、内服終了2か月(8週間)後以降に尿素呼気試験を行い判定します。
保険診療では2回まで除菌治療を行うことができます。1次除菌治療を行い、除菌が成功すれば終了。1次除菌で除菌失敗の場合には、抗生剤を変更し2次除菌を行います。2次除菌までで、およそ95%強の人が除菌に成功します。一度使用した抗生剤の組み合わせに対してはピロリ菌が耐性菌となっているため、同じ薬の組み合わせを使用しても効果がありません。
2次除菌でも成功しなかった場合には、3次除菌などの方法がありますが保険診療の適応外となるため自費診療となります。

1)一次除菌
胃薬(プロトンポンプ阻害薬:胃酸分泌を抑える薬)と2種類の抗生剤(アモキシシリン、クラリスロマシン)の計3種類のお薬を朝・夕1日2回で1週間内服します。約90%の人で除菌が成功します。

2)二次除菌(一次除菌が不成功だった方)
胃薬(プロトンポンプ阻害薬:胃酸分泌を抑える薬)と2種類の抗生剤(アモキシシリン、メトロニダゾール)の計3種類のお薬を朝・夕1日2回で計1週間内服します。約90%の人で除菌が成功します。

<ピロリ菌除菌後の検査方法>

検査中

治療後ピロリ菌が消えたかどうかは、除菌治療終了2か月(8週間)後以降に、薬を飲んで呼気を採取して検査(尿素呼気試験)する方法で判定します。尿素呼気試験は4時間以上の絶食で来院していただき、検査薬を1錠内服して20分後に吐く息を集めて行う簡単な検査です。検査結果は1週間後に判明しますので、再診でのご説明となります。お電話での検査結果のお問い合わせは行っておりません。

<除菌によるデメリット>
除菌成功により胃の粘膜の炎症が改善して胃酸分泌が活発となるため、除菌後におよそ10%の方に一過性の逆流性食道炎(胸焼けなどの症状)や十二指腸びらんが発生すると報告されています。また胃の調子が良くなることで、食欲が亢進して体重が増えてしまう人もいますので、糖尿病、高脂血症及び肥満の方は注意が必要です。

ピロリ菌除菌後

ピロリ菌除菌により胃癌の発生リスクは減りますが、3分の1程度の減少であるため、数年以内に除菌成功者100人に1~2人の割合で胃癌が発見されると言われています。ピロリ除菌で胃癌が完全に発生しなくなりませんので注意が必要です。必ず定期的に胃の検査(胃カメラ検査が望ましい)を受けていくことが大切です。除菌成功例でのピロリ菌の再陽性化率(0.2-2%)は低いと報告されています。その多くは尿素呼気試験でも検出できないほどの微量のピロリ菌が胃の中に残っていて、そのピロリ菌が増殖することによるものと言われています。
なお、女性で妊娠や授乳している可能性のある方、またペニシリンアレルギーのある方は除菌治療を受けることはできません。また慢性疾患のある方は、除菌治療をしてよいか主治医にご相談して下さい。

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